宇宙ラジオ

Imaginary Picture Book

〈description〉
この本は制作者がpixabay.comなどのフリー・フォトを加工して文を加え、 電子ブックの見本にしたものです。ビューアー・アプリがなくてもご覧いただけます。 ページの両サイドをマウスでクリックするかドラッグすればページめくりができます。 codeはturnjs.comのサンプルを参照しました。

忘れかけていた空の青に
彼は口ずさむ....Us, and them,....And in the end
it's only round and round and round

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忘れかけていた海の青に
どこの誰だか誘われている
吹きさらし
何億年もの透明を湛えて海は待つ

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忘れかけていた星の深さに どこの誰だか大の字に
神の気配につかっている

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白昼はたくさんの死やら性を隠している
宇宙の寂寥に囲まれた
きょうの快晴
甲骨文字の姿になって
思い思いに踊る精霊たちで
空は混む

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空は人に目隠しするので
彼はときどき手の鳴る方を仰いでみる
ジョンの歌のように
もし地上と宇宙に境がなかったら
ヒト属の血は少し変わっただろうか

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どんなレエダアがあるのか
蠱惑の色をさぐり当てる二重らせんの染色がかり
どんなレエダアがあるのか
花も蝶も樹も草も
星の色を塗り替えて風と遊ぶ

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星の深さを覚えたら 誰にも起こるラピタの人の血の騒ぎ

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水平線から澪を引き 水平線へと水を切る彼らの旅

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《 no reservations 》
安楽椅子の古老は神の教えを説いた
奴らの神の許しは許せないと
この世に椅子のない神の子供はつぎつぎ爆死した
古老は型通りの祈りをしていよいよ安楽だった
ママの子供たちがつぎつき爆死するので世界は翳った
Imagine there's no Reservations 誰かふと口ずさむ
世界中の妊婦がおなかに手をあて
小さな声で神の教えを口ずさむ

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《 outside orbit 1 》
ダーウィンの汀で
宇宙飛行士は任務を喪失する
deja vuのようなそらの蒸留色に
その漆黒に彼は思わず身震いする……

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〈 Is There Anybody Out There? 〉

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《 night sea journey 》 ネクタイを緩めるように 彼は窓を開けたかった 働きづめで だんだん彼の眠りは痩せこけた ページを飛ばし読みするような生活の 空白の重さ それは予兆だった
とある明け方 開け放しの扉が風に揺れている 回廊の辻にまた扉があり 入り子に扉はつづいている 縦横の回路の奥に黄色の部屋が見えて そこは子供じぶんの迷路なのだとわかる

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黄色の部屋の 時間は引っ越している 押し殺していた叫びに彼はようやく呻く 庭で沙になった時間の骨がときどき吹きだまる
彼の眠りは痩せこけているので 彼の目は見開いたまま 長い漆黒に閉ざされる だが予兆はまた脈を搏つ なにも聞こえないのに 鳥たちの羽ばたき 瞳孔は空の気配をさぐっている 見慣れぬ窓があらわれ ひたいの隅に薔薇があり 雨音に睫毛はうごく

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聴くともなしに手枕で釈尊さんは聴いている
地上には届かぬ宙の心音のようなもの
立派な耳と足の紋図で釈尊さんは教えている
かつて哲人たちが聴いた宇宙ラジオのようなもの

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半眼の眼差しの中に釈尊さんは映している
この世とあの世をつなぐ臍の緒のようなもの
釈尊さんみたいな寝姿で妊婦はそっと手をあてる
胎児が聴いている宇宙ラジオのようなもの

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《 outside orbit 2 》 青年の戦場はモニタの嵌るキューポラだった 指を走らせてフォーカスすればリターンキー ビームの弾道の先にふんわりと キノコ雲がわき上がる ヒトの遺伝子圏外の戦闘は呆気ない 青年はヘッドホンを置いて ひとりキューポラから凱旋の梯子段を降りる フンコロガシが仕事をする砂漠の道を疾駆して 砂漠の谷の気晴らしの場所に立っている

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ヒトは銃を棄て手榴弾を棄て戦車を棄て もうキューポラの次のクレイモデルを削っている 昼の月に向けられた苔と錆のミサイル 青年は吹きさらしの年代物博物館で小人になる 影を背にあてどない慰みをする 兵士のように苔と錆の沙を崩してみる なにか聞こえそうな空を邪魔しているラジオのニュース だんだん影は影を隠し誰も呼ばない 大気圏のプリズムの底の夕映え

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忘れかけていた海の
どこの誰だか目を覚ます
じぶんのいない海への郷愁
どこかで誰かが目を覚ます

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〈引用:quote〉
p04…ピンク・フロイド「アス・アンド・ゼム」
   Pink Floyd " Us And Them " lyric
p23…ピンク・フロイド
   「ザ・ウォール / イズ・ゼア・エニバディ・アウト・ゼア」
   Pink Floyd " Is There Anybody Out There? " lyric

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